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物語を綴る~生きる喜びを拾いながら~

おひとり様シニアのひとり言。

詩のなぐさめ 池澤夏樹

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1月の半ばに図書館で借りたのだけれど、
その硬質な文体に阻まれて、積読。
とにかく、堅い本は最近とんと読んでいない。

さて、返却日になってから、偶然開いたページに目を通すと、
中原中也の詩について書いてあった。

池澤さんは、中也は気恥ずかしいそうだ。
「中也=青年=青春」だから。

       帰郷    中原中也

柱も庭も乾いてゐる
今日は好い天気だ
    縁〈(えん)〉の下では蜘蛛の巣が
    心細さうに揺れてゐる

山では枯木も息を吐〈(つ)〉く
あゝ今日は好い天気だ
    路〈(みち)〉傍〈ばた〉の草影が
    あどけない愁〈(かなし)〉みをする

これが私の故里〈ふるさと〉だ
さやかに風も吹いてゐる
    心置なく泣かれよと
    年増婦〈としま〉の低い声もする

あゝ おまへはなにをして来たのだと……
吹き来る風が私に云ふ

中也は30歳で亡くなっているので、たしかに彼の詩は青春の詩なのだが、
最後の2蓮、
あゝ おまへはなにをして来たのだと……
吹き来る風が私に云ふ

は、初老(?)の私の胸にも、妙に突き刺さる。

で、池澤さんによると日本文学界の最後の青春派が小林秀雄だそうで、
小林秀雄が還暦を迎えたときの言葉を引用して、次のように言います。

「還暦を祝はれてみると、てれ臭い仕儀になるのだが、せめて、これを機会に、
自分の青春は完全に失はれたぐらゐのことは、とくと合点したいものだと思ふ。」
六十歳になってまだ青春なのか。あなたが書いてきたものはすべてその路線上にあったのか。
気負いと大言壮語の文体もその故だったのか。

小林秀雄の文体が「気負いと大言壮語」というのは、その通りだと私も思う。
還暦を過ぎても中也は心に響くが、小林秀雄は読むに堪えない。
若い時分になぜあんなに読んだのかわからない。
大言壮語の煙に巻かれたのかしら。

というわけで、この「詩のなぐさめ」、
なかなか面白い本なので、図書館で延長の手続きをした。

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